いい香りなのは分かる。でもどんな香りか説明しようとすると、「なんか……いい匂い」しか出てこない。香水の口コミを書こうとして手が止まったこと、ある人も多いと思う。
これ、語彙力のせいじゃないんだよね。人間はそもそも香りを言葉にするのが苦手なんだ。ただ、練習すればちゃんと上達することも分かっている。
この記事では、香りが言葉にしにくい理由と、今日からできる練習方法をまとめたよ。

香りを言葉にできると、香水選びで外しにくくなるし、人に香りをすすめるときも伝わりやすくなるよ。
この記事でわかること
- 香りを言葉にするのが難しい理由
- 香りを言葉にするのが得意な人たちの研究
- 香りを表現するための「4つの物差し」
- 今日からできる練習方法
なぜ香りは言葉にしにくいのか
「色の名前」はあるのに「香りの名前」はない
色には「赤」「青」「黄色」のような、それ自体を表す名前がある。でも香りには、そういう言葉がほとんどない。
香りを説明するときは「レモンっぽい」「石けんみたい」と、別のものにたとえるしかない。香りそのものを指す言葉って、日本語にも英語にもほとんどないんだよね。
「知ってるのに名前が出てこない」現象
よく知っている香りなのに、目をつぶって嗅ぐと名前が出てこない。研究の世界では、この状態を「tip of the nose(鼻先まで出かかっている)」と呼んでいる。
香りの情報は、感情や記憶をつかさどる部分には直接届くけど、言葉を扱う部分とのつながりは比較的弱いと考えられている。「懐かしい」「好き」はすぐ分かるのに「何の香りか」が言えないのは、そのせい。
香りを言葉にするのが得意な人たちもいる
マレー半島に暮らすジャハイという人たちの言語には、香りそのものを表す言葉が十数種類ある。彼らは色の名前を言うのと同じくらい、すらすら香りを言葉にできることが報告されている(マジッド&ブレンハルト, 2014)。
同じ実験で、英語を話す人たちは香りの説明にかなり苦戦していて、答えもばらばらだったそう。

人間が香りを言葉にできないわけじゃなくて、言葉にする習慣と語彙がないだけ。だったら練習で伸ばせるってことだよね。
調香師やソムリエが香りを細かく言い分けられるのも、才能というより、香りと言葉を何度も結びつけてきた積み重ねなんだと思う。
香りを表現するための「4つの物差し」
いきなり「どんな香り?」と聞かれても困るよね。なので、香りをいくつかの軸に分けて考えるのがおすすめ。
何に似ている?(たとえ)
基本はこれ。いちばん伝わりやすい。
- 食べ物:レモン、りんご、バニラ、はちみつ、紅茶
- 植物:バラ、ジャスミン、ヒノキ、刈りたての草
- 生活のもの:石けん、洗いたてのシーツ、本、雨上がりの道
温度は?
冷たい、涼しい、ぬるい、温かい、熱い。ミントやシトラスは冷たく、バニラやシナモンは温かく感じる人が多い。
重さ・明るさは?
軽い・重い、明るい・暗い、透明・濃厚。シトラスなら「軽くて明るい」、ウッディやアンバーなら「重くて暗い」と言われることが多い。
質感・形は?
ふんわり、さらっと、しっとり、とがっている、丸い。手ざわりや形にたとえると、イメージが一気に伝わりやすくなる。
| 香料 | 似ているもの | 温度 | 重さ・明るさ | 質感 |
|---|---|---|---|---|
| ベルガモット | 紅茶のアールグレイ | 涼しい | 軽い・明るい | さらっと |
| ローズ | バラの花びら、ジャム | ぬるい | 中くらい | しっとり |
| ムスク | 洗いたての肌、シーツ | 温かい | 中くらい・やわらかい | ふんわり |
| サンダルウッド | 木の家具、お線香 | 温かい | 重い・落ち着いた | なめらか |
この4つを組み合わせると、「アールグレイみたいで、涼しくて軽い、さらっとした香り」くらいまで具体的に言えるようになる。
今日からできる練習方法
練習1:毎日ひとつ、身の回りの香りを言葉にする
朝のコーヒー、ハンドソープ、通勤路の植え込み。1日ひとつでいいので、4つの物差しで言葉にしてみてほしい。スマホのメモに1行書くだけで十分。
練習2:目をつぶって当てる
家にあるスパイスや紅茶、果物を、家族や友だちに目隠しで嗅がせてもらって当てっこ。「知ってるのに名前が出ない」もどかしさを味わうと、香りと名前が結びつきやすくなる。
練習3:精油で「単体の香り」を覚える
香水には何十種類もの香料が入っているから、いきなり分解するのは難しい。先にラベンダー、ベルガモット、サンダルウッドみたいな精油で単体の香りを覚えておくと、香水のノートを見たときに香りが浮かぶようになる。
わたしもアロマテラピー検定の勉強で、精油を実際に嗅いで香りを覚えた。これをやっておくと、香水の香りを分解して考えるのがかなり楽になるよ。

練習4:2つの香りを比べる
1つの香りを説明するより、2つを比べるほうがずっと簡単。「Aより甘い」「Bのほうが重い」みたいに、違いを探すところから始めると自然と言葉が増えていく。

このブログで似ている香水を比べているのも、まさにこの練習。並べて嗅ぐと、片方だけでは気づかなかった特徴が見えてくるんだよね。

香りを言葉にできるようになると変わること
- 香水を選ぶとき、自分の好みがはっきりする
- 店員さんに好みを伝えやすくなる
- プレゼントで相手に合う香りを選びやすくなる
- 香りの記憶が残りやすくなる
まとめ
- 香りを言葉にしにくいのは、香りそのものを表す言葉が少ないから
- 香りの表現が得意な文化もあって、練習で伸ばせる力と考えられている
- 「似ているもの・温度・重さ・質感」の4つの物差しで考えると表現しやすい
- 練習は「毎日ひとつ言葉にする」「目隠しで当てる」「精油で単体を覚える」「2つを比べる」の4つ
参考文献
- マジッド&ブレンハルト(2014)「正しい言語を話せば、においは言葉で表現できる」『Cognition』130巻2号, 266–270頁 論文ページを見る
- ローレス&エンゲン(1977)「においの連想:干渉・記憶術・言語ラベル付け」『Journal of Experimental Psychology: Human Learning and Memory』3巻1号, 52–59頁 論文ページを見る
【最後に】この記事を書いた人


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