「香水の香りが分かる」のとは少し違う話。実は、人の”匂い”の変化から病気に気づいた女性がいて、その気づきが本物の医学研究に発展しているって知ってた?この記事では、香り心理学の中でもちょっと変わった切り口、「嗅覚と病気」の実話を紹介するよ。

香りの心理学シリーズ、今回は香水じゃなくて”人の匂い”の話。実際にあった研究なんだけど、これがなかなかすごいんだよ。
この記事でわかること
- スコットランドの女性ジョイ・ミルンさんが夫の匂いの変化に気づいた実話
- その気づきがマンチェスター大学の研究にどうつながったか
- 研究で見つかった、パーキンソン病に関連するとされる物質
- この研究が持つ可能性と、今の時点での限界
夫の匂いが変わったことに気づいた、一人の女性
スコットランド・パース在住のジョイ・ミルンさんは、生まれつき嗅覚がとても鋭い「遺伝性過敏嗅覚(hereditary hyperosmia)」の持ち主だと言われている。ある時から、夫のレスさんの体から今までと違う、麝香のような匂いがすることに気づいたという。当時はその変化の理由が分からなかったが、それから約6年後、レスさんはパーキンソン病と診断された。
出典: Parkinson’s UK公式サイト「Meet the woman who can smell Parkinson’s」
その後、ジョイさんはパーキンソン病患者の支援団体が開くイベントに参加した際、会場にいた人たちから同じような匂いを感じたと話したことがきっかけで、研究者の目に留まることになったと報じられている。
マンチェスター大学が本格的に調査を開始
この話を聞いたマンチェスター大学の研究者たちは、ジョイさんの”鼻”が本当にパーキンソン病を識別できるのか、実際にテストを行ったとされている。その後、研究チーム(Perdita Barran教授ら)は、ジョイさんとの共同研究を重ね、パーキンソン病に特徴的な匂いの元となる物質の特定を進めていった。
研究では、皮膚から分泌される皮脂(sebum)を質量分析という手法で分析し、パーキンソン病患者に特徴的とされる複数の物質(馬尿酸・エイコサン・オクタデカナールなど)が見つかったと報告されている。これらは神経伝達物質の変化と関連する可能性があるとされているが、詳しいメカニズムについては現在も研究が続けられている段階。
出典: マンチェスター大学公式サイト「A nose to diagnose: improving Parkinson’s diagnosis」、Parkinson’s UK「’Smelling’ Parkinson’s research could make it quicker and easier to diagnose Parkinson’s」
皮膚を綿棒でなぞるだけの検査法へ
この研究をもとに、皮膚を綿棒でなぞるだけで調べられる、非侵襲的な検査法の開発が進められていると報じられている。報道では、この方法によって数分程度で結果が出る可能性があるとされ、高い精度で判定できたという研究結果も紹介されている。ただし、これはあくまで研究段階の技術であり、現時点で一般的な医療機関で受けられる確立した診断法として普及しているわけではない点には注意したい。
出典: Euronews「Woman who can smell Parkinson’s disease helps scientists develop 3-minute skin swab test」、NPR「A Woman Who Can Smell Parkinson’s Is Inspiring New Research Into Diagnosis」

一人の「気づき」が、ちゃんとした医学研究にまで発展してるのがすごいよね。香りって本当にいろんな可能性を持ってるんだなって思う。
この話から個人的に思うこと
この話で一番印象に残ったのは、最初に異変に気づいたのが医師や研究者ではなく、日常的に一番近くで夫を見ていた家族だったという点。専門的な知識や検査機器がなくても、「なんとなく前と違う」という感覚に一番早く気づけるのは、実はいつも近くにいる人なんだと思う。
これは病気の話に限らず、身近な人間関係にも通じるところがある気がしている。香りに限らず、表情や声のトーン、ちょっとした仕草の変化なども、言葉にはしにくいけど確かに感じ取っているということは多い。そういう「うまく説明できない違和感」を、根拠がないからと流してしまわずに、一度誰かに話してみる、気になるなら専門家に相談してみる、というのは意外と大事な行動なんじゃないかと思う。
実生活での活かし方として、たとえば家族や同僚など日常的に接する相手について「以前と少し様子が違うかもしれない」と感じた場合、それが体調面であれ気分面であれ、その直感を無視せず一度声をかけてみる、という程度のことから始められると思う。医学的な診断をしようとするのではなく、「気づいたら気にかけてみる」というスタンスとして参考にできる話だと感じている。
よくある質問(FAQ)
Q. 自分でも匂いでパーキンソン病を判断できますか?
A. いいえ、おすすめできません。ジョイさんのケースは、生まれつき非常に鋭い嗅覚を持つ人による特殊な事例として研究対象になったものです。一般の人が体臭の変化から病気を自己診断するのは不可能ですし、危険です。体調や症状が気になる場合は、必ず医療機関を受診してください。
Q. この検査法は病院で受けられますか?
A. 報道されている検査法は研究段階の技術であり、2026年現在、一般の医療機関で標準的に受けられる検査として広く普及しているわけではありません。実用化の状況は今後変わる可能性があるため、最新情報は医療機関や公式発表を確認してください。
まとめ
一人の女性の「なんだか匂いが違う」という気づきが、きっかけとなって本格的な医学研究に発展した実話を紹介した。香りと病気の関係はまだ研究途上の分野だけど、こうした事例を知ると、嗅覚という感覚の奥深さを改めて感じる。今後の研究の進展にも注目していきたい。