朝つけた香水が、お昼にはもう香らない気がする。だからもうワンプッシュ……。これ、香りが消えたわけじゃなくて、自分の鼻が慣れてしまっただけのことがほとんど。
この「鼻が慣れる」現象を、嗅覚順応(きゅうかくじゅんのう)という。気づかないうちに香水をつけすぎてしまうのも、だいたいこれが原因。この記事では、嗅覚順応の仕組みとつけすぎを防ぐ方法を紹介するね。

自分では「ほのかに香ってる」くらいでも、周りには十分届いていることが多い。これを知っておくだけでも、香水の失敗はかなり減るよ。
この記事でわかること
- 嗅覚順応とは何か、なぜ起きるのか
- 自分の家や自分の香りが分からなくなる理由
- 「コーヒー豆で鼻をリセット」は本当に効く?
- 香水のつけすぎを防ぐ5つのルール
嗅覚順応とは?
嗅覚順応とは、同じにおいを嗅ぎ続けているうちに、そのにおいを感じにくくなる現象のこと。部屋に入った瞬間は「カレーのにおいがする」と思っても、しばらくいると気にならなくなる。あれが嗅覚順応。
多くの場合、数分ほど嗅ぎ続けるだけで感じ方はかなり弱くなる。そして、そのにおいから離れてしばらくたつと、感覚は元に戻っていく。
なぜ鼻は慣れるようにできているのか
嗅覚順応は、鼻の欠陥ではなく、生きるための大事な仕組みだと考えられている。
ずっと同じにおいを強く感じ続けていたら、新しいにおい、たとえば食べ物が腐ったにおいや、何かが焦げるにおいに気づきにくくなってしまう。変わらない情報はいったん脇に置いて、新しい変化に気づけるようにする。鼻はそういうふうにできているんだよね。
自分の家のにおいが分からない理由
他人の家に行くと「この家のにおい」を感じるのに、自分の家のにおいはまったく分からない。これも嗅覚順応によるもの。
アメリカの研究では、参加者の自宅に特定の香りを2週間置いて生活してもらったところ、その香りへの感度が下がり、元に戻るまでにもある程度の時間がかかったことが報告されている(ダルトン&ワイソッキ, 1996)。毎日嗅いでいるにおいほど、自分では気づきにくくなるみたい。

柔軟剤の香りが「自分では弱いのに、人からは強いと言われる」のも同じ仕組み。毎日着ている服の香りには、鼻がすっかり慣れちゃってるんだよね。
自分の香水が分からなくなる3つのパターン
毎日同じ香水を使っている
毎日つけている香りは、鼻にとって「いつものにおい」。つけた直後でも、使い始めた頃ほど強く感じなくなる。お気に入りの香水を長く使っている人ほど、量が増えていきやすいので注意。
つけた直後にずっと嗅いでいる
つけた後に手首を何度も嗅いで確かめていると、そこで鼻が慣れてしまう。結果、「もう香ってない」と感じてつけ足してしまう。
香りの強い場所に長くいる
香水売り場で何本も試したあと、どれがどれだか分からなくなる経験、ない? あれも順応のひとつ。強い香りに囲まれていると、においの区別そのものがつきにくくなる。
「コーヒー豆で鼻をリセット」は効く?
香水売り場に置かれていることもあるコーヒー豆。「嗅ぐと鼻がリセットされる」と言われているけど、研究ではそこまではっきりした効果は確認されていない。
アメリカの研究では、香りを嗅ぎ分ける作業の合間に「コーヒー豆」「レモン」「普通の空気」を嗅いでもらって比べたところ、コーヒー豆が特別に有利という結果は出なかった(グロソフスキーほか, 2011)。

じゃあどうするかというと、いちばん確実なのは「香りのない場所で少し休む」こと。売り場の外に出て深呼吸するだけでも違うよ。
試香するときのコツ
- 1回の試香は3〜4本までにしぼる
- 気になったものはムエットではなく肌につけて、その場を離れる
- 時間をおいて、数時間後にもう一度嗅いでから決める
たくさん試したい人は、量り売りやサンプルを家で1本ずつ試すのも手。家なら、香りの変化も落ち着いて確認できる。

香水のつけすぎを防ぐ5つのルール
ルール1:量は先に決めておく
その日の気分で量を変えると、鼻が慣れているぶんどんどん増えていく。「オードパルファムなら1〜2プッシュ」「オードトワレなら2〜3プッシュ」のように、自分の基準を先に決めておこう。
ルール2:つけ足しは「時間」で判断する
「香らなくなったから」ではなく「つけてから何時間たったか」でつけ足すかどうかを決める。オードトワレでも、つけてから2〜3時間はまだ周りには香っていることが多い。
ルール3:鼻から遠い場所につける
首や耳の後ろは自分の鼻に近いぶん、順応しやすく、周りにも強く香りやすい。腰や膝の裏、足首など、下のほうにつけると香りがやわらかく立ちのぼって、つけすぎの印象になりにくい。
ルール4:いつもの香水は「少し減らす」くらいがちょうどいい
毎日使っている香りは、自分が感じているより周りには届いている。迷ったら、いつもより1プッシュ減らしてみて。
ルール5:信頼できる人に聞く
結局、いちばん正確なのは他人の鼻。家族や仲のいい友だちに「近くにいて香りが強くない?」と聞いてみよう。

香りを日替わりにするのもおすすめ。2〜3本をローテーションすると鼻が慣れにくく、毎回ちゃんと香りを楽しめるよ。
よくある質問
嗅覚順応は、どれくらいで元に戻る?
数分〜数十分の短い順応なら、そのにおいから離れて新鮮な空気を吸っていれば、比較的早く戻ってくる。一方、毎日の生活で何週間も嗅ぎ続けているにおい(自分の家、いつもの柔軟剤など)は、離れてもすぐには戻らないことがある。旅行から帰ってきた日に、自分の家のにおいに気づくのはこのため。
香水を変えれば、つけすぎは防げる?
新しい香りは鼻がまだ慣れていないので、最初のうちは自分でもしっかり感じられる。ただ、毎日使っているうちに同じように順応していくので、根本的な解決にはならない。量のルールを決めておくほうが確実。
周りの人も、私の香水に慣れていく?
同じオフィスで毎日一緒にいる人は、ある程度慣れていく可能性がある。でも、会議室に入ってきた人、エレベーターで乗り合わせた人にとっては「新しいにおい」。毎日会う人が何も言わないからといって、初対面の人にも同じとは限らない点は覚えておきたいね。
嗅覚順応と、においが分からなくなる病気は違う?
まったく別もの。嗅覚順応は特定のにおいに一時的に慣れるだけで、ほかのにおいは普通に分かる。一方、風邪のあとや鼻の病気などで、いろいろなにおいが全体的に分かりにくくなることもある。ずっと続く場合は、耳鼻咽喉科で相談してみてね。

嗅覚と体の関係については、こんな記事も書いてるよ。

まとめ
- 嗅覚順応は、同じにおいを嗅ぎ続けると感じにくくなる自然な仕組み
- 自分の家・自分の服・自分の香水は、自分では分かりにくい
- コーヒー豆の効果ははっきりしない。香りのない場所で休むのが確実
- 香水は「量を決める」「時間でつけ足す」「鼻から遠い場所に」が基本
参考文献
- ダルトン&ワイソッキ(1996)「長期間においにさらされた後の順応の性質と持続時間」『Perception & Psychophysics』58巻5号, 781–792頁 論文ページを見る
- グロソフスキーほか(2011)「コーヒーとレモンの香りがにおいの識別に与える影響の探索的研究」『Perceptual and Motor Skills』112巻2号, 536–538頁 論文ページを見る
【最後に】この記事を書いた人


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